クラウド利用の拡大、SaaSの乱立、リモートワークの定着により、組織のIT資産は社内ネットワークの外側へ大きく広がりました。その結果、「どこまでが自社の管理対象なのか分からない」「把握していないサーバやサービスが存在する」といった状態に陥りがちです。

本記事では、EASMとは何か、なぜ今必要とされているのか、そして組織としてどのように導入・運用すべきかを、実践的な視点でわかりやすく解説します。


背景:外部攻撃対象領域の拡大と可視化の難しさ

従来のセキュリティ対策は、社内ネットワークを前提とした境界防御が中心でした。しかし現在では、クラウド上の仮想マシン、コンテナ、API、SaaS、さらには委託先や子会社が管理するシステムまで、攻撃対象領域は急速に拡大しています。

特に問題となるのが、以下のような「把握漏れ資産」です。

  • 過去に構築されたまま放置されているクラウドリソース
  • 本番・検証環境の切り替え時に残った公開サーバ
  • 開発チームが独自に利用しているSaaSやAPI
  • DNSに登録されたままの未使用サブドメイン

攻撃者はこれらをインターネット側から自動スキャンし、脆弱なポイントを見つけて侵入します。つまり、防御側が「知らない資産」は、攻撃者にとって「最も狙いやすい入口」なのです。

このような状況下で、「まず何が外に見えているのかを知る」ことが、セキュリティ対策の第一歩となります。ここで重要な役割を果たすのがEASMです。


EASMとは何か?その役割と特徴

EASM(External Attack Surface Management)とは、インターネットから見える自組織のIT資産を継続的に発見・可視化し、リスクを管理する取り組みです。

EASMの特徴は、内部の台帳や構成管理情報に依存せず、攻撃者と同じ視点(外部視点)で資産を洗い出す点にあります。具体的には以下のような情報を対象とします。

  • 公開IPアドレス、ドメイン、サブドメイン
  • Webアプリケーション、APIエンドポイント
  • TLS証明書、クラウド設定情報
  • 既知の脆弱性や設定ミス

これにより、「社内では把握していなかったが、外部からは丸見えだった資産」を特定できるようになります。EASMは単なる棚卸しではなく、継続的に変化を検知し続ける運用型のセキュリティ対策である点が重要です。


攻撃手法とEASMで見えるリスク

EASMの導入によって、次のような攻撃リスクが可視化されます。

  • 未使用だが公開されたままの管理画面
  • 古いミドルウェアやフレームワークの脆弱性
  • 認証不要でアクセス可能なAPI
  • クラウドのアクセス制御設定ミス

これらは、ランサムウェアや情報窃取、踏み台攻撃の初期侵入点として頻繁に悪用されます。実際、多くの侵害インシデントでは「高度なゼロデイ攻撃」ではなく、「基本的な設定不備」が原因となっています。

EASMは、こうしたリスクを侵入される前に発見できる点が最大の価値です。


対策:EASM導入と運用のステップ

EASMを効果的に活用するためには、段階的な導入と運用が重要です。

  1. 対象範囲の定義
    まずは自社ドメイン、クラウド環境、関連会社や委託先を含め、どこまでを可視化対象とするかを明確にします。
  2. 資産の自動検出と分類
    EASMツールを利用し、外部から見える資産を自動的に検出します。重要度や用途ごとに分類することで、対応の優先順位を付けやすくなります。
  3. リスク評価と是正対応
    発見された脆弱性や設定不備に対して、修正・公開停止・アクセス制御強化などの対応を行います。
  4. 継続的な監視
    新たな資産の出現や設定変更を検知し、常に最新の状態を維持します。ここが一度きりの棚卸しとの大きな違いです。
  5. 運用プロセスへの組み込み
    開発・運用フローにEASMの結果を組み込み、セキュリティを日常業務の一部として定着させます。

あるべき姿:攻撃者視点を前提としたセキュリティ運用

EASMが目指す理想は、「自組織が外部からどう見えているかを常に把握している状態」です。
これはゼロトラストの考え方とも親和性が高く、「外にあるものは常に狙われる」という前提で設計・運用を行うことが重要です。

また、EASMは単独で完結するものではありません。
サイバー脅威インテリジェンスやSOC運用と組み合わせることで、より実効性の高い防御が可能になります。

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まとめ

EASMは、「攻撃されてから対応する」セキュリティから、「攻撃される前に潰す」セキュリティへの転換を支える重要な取り組みです。
IT資産が増え続ける現代において、外部攻撃対象領域を把握できていない状態は、それ自体が大きなリスクと言えます。

まずは「何が外に見えているのか」を知ること。
そこから優先順位を付け、段階的に改善していくことが、現実的かつ効果的なセキュリティ強化への近道です。
EASMは、その第一歩として非常に有効なアプローチです。