
「サービスが突然つながらなくなった」——DDoS攻撃は今や「中小企業でも他人事ではない」
「大規模なDDoS攻撃が起きたのはニュースで見たが、うちは知名度がないから関係ない」——そう思っていませんか。現実は異なります。
DDoS攻撃(大量のアクセスを一斉に送りつけてサービスをダウンさせる攻撃)は、レンタル攻撃サービス(DDoS-as-a-Service)の普及により、1時間あたり数百円から誰でも仕掛けられる時代になっています。元従業員による嫌がらせ、競合他社による妨害、ランサムウェアグループによる「攻撃を止めたければ身代金を払え」という恐喝——標的はサービス規模を問いません。
実際、IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」では「DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃)」が組織向け脅威の第9位に選出されました。2024〜2025年にかけて国内でも多数の被害が報告されており、もはや大企業だけの問題ではありません。
ECサイトなら1時間のダウンで数十万〜数百万円の機会損失。SaaSサービスなら顧客への信頼失墜とSLA違約リスク。クラウドのオートスケールが発動して想定外の課金が発生することもあります。
Azure上でサービスを公開しているなら、DDoS対策は「あればいい」ではなく「必須」の時代です。
DDoS攻撃の種類を平易に解説
DDoS攻撃(Distributed Denial of Service:分散型サービス拒否攻撃)とは、世界中の乗っ取られた端末(ボットネット)から一斉にリクエストを送り、サーバーやネットワークを機能停止させる攻撃です。
攻撃は大きく3種類あります:
- 帯域幅消費型(ボリューム攻撃):とにかく大量のデータを送りつけてネットワーク回線を埋める。数百Gbpsに及ぶ攻撃も発生
- プロトコル攻撃:TCP接続の「ハンドシェイク処理」を半端な状態で大量送信し、サーバーの接続処理能力を枯渇させる(SYNフラッド攻撃など)
- アプリケーション層攻撃(L7攻撃):正常なHTTPリクエストに見せかけた大量アクセスでWebサーバーを過負荷にする。通常トラフィックとの区別が難しい
Azure DDoS Protectionの2つのプランと料金
Azureには、すべての環境に無料で適用される基本保護(DDoS Basic)に加えて、上位の有料プランが2種類あります。
| DDoS Network Protection | DDoS IP Protection | |
|---|---|---|
| 保護対象 | 仮想ネットワーク全体 | パブリックIPアドレス単体 |
| 月額料金(目安) | 2,944ドル〜 | 約199ドル/IPアドレス |
| 向いている規模 | 中〜大規模、複数サービス | 単一サービス・スモールスタート |
| 攻撃時のコスト保護 | ✅ あり | ❌ なし |
| 専門チームサポート | ✅ あり | ❌ なし |
コスト保護について補足: DDoS攻撃を受けると、Azureのオートスケール機能がトリガーされてコンピューティングリソースが自動増強され、想定外の課金が発生することがあります。DDoS Network Protectionを契約していると、攻撃による追加コストが補填される「コスト保護」が適用されます。
管理者が評価すべきビジネスメリット
① 24時間自動で攻撃を緩和(運用負担ゼロ)
通常のDDoS攻撃はAzureが自動で検知・緩和します。情シス・インフラ担当者が深夜に対応を迫られる事態を防げます。
② 攻撃時のコスト暴走を防止
オートスケールによる予期しない課金をコスト保護機能が補填。予算超過リスクを大幅に低減します。
③ 攻撃の証跡をAzure Monitorに自動記録
「DDoS攻撃が何時から何時まで発生し、どの程度の規模だったか」が自動でログに記録されます。顧客へのSLA説明、セキュリティ監査の証跡提出に活用できます。
基本的な設定ステップ
Step 1:DDoS保護プランの作成
Azureポータル → 「DDoS保護プラン」→「作成」でリソースを作成します。サブスクリプション・リージョンを指定します。
Step 2:仮想ネットワーク(VNet)への適用
保護したいVNetの設定→「DDoS保護」→作成した保護プランを選択して有効化。
Step 3:診断ログ・メトリクスの有効化
Azure Monitor → 診断設定で「DDoSMitigationReports」を有効化。攻撃発生時の詳細ログが記録されます。
Step 4:アラートの設定
「DdosProtectionNotifications」メトリクスにアラートを設定し、攻撃検知時にメール・Teamsへ即時通知が届く体制を構築します。
実運用のハマりどころ:DDoS単独では「L7攻撃」は防げない
Azure DDoS Protectionは主にL3/L4層(ネットワーク〜トランスポート層)の大規模攻撃に対して高い効果を発揮しますが、Webアプリケーションを対象としたL7攻撃(HTTPフラッド・Slowloris攻撃など)は専門外です。
DDoS Protectionだけを導入して「対策完了」と思っていたが、L7攻撃でWebサイトがダウンした——という事例があります。
完全なDDoS防御には以下の2層構成が必要です:
- Azure DDoS Protection:L3/L4の大規模ボリューム攻撃を防御
- Azure Application Gateway + WAF(Webアプリケーションファイアウォール) または Azure Front Door + WAF:L7の標的型攻撃を防御
既にApplication GatewayやAzure Front Doorを使っているなら、WAFを有効化してDDoS Protectionと組み合わせることが基本構成です。
まとめ
DDoS攻撃は「大企業だけのリスク」ではなくなっています。攻撃を受けてから対策を考えても、ダウンタイムの損害と顧客への信頼失墜は取り戻せません。
Azure DDoS Protectionのプラン選定(IP ProtectionかNetwork Protectionか)、WAFとの組み合わせ設計、コスト試算に不安がある場合は、専門家への事前相談が最短ルートです。ぜひお気軽にご相談ください。




